HOME

みやぎ建設新聞 ピックアップ記事

2023-11-08# 物件(仙台圏)

加美町/本庁舎の改築事業/矢越地区を候補に検討へ/合併特例債活用で28年度完成目指す

加美町は、老朽化が著しい本庁舎の建て替えに向け、国道457号沿いの矢越地区の町有地を建設候補地として検討を進める方針だ。石山敬貴町長が6日に保健センターで開いた町政懇談会で明らかにした。合併特例債の活用期限となる2028年度内の完成を目指す。

旧中新田町役場として西田三番5地内に建てられた現在の本庁舎は、1966年建設でRC造3階建て、延べ約1780平方㍍の施設(施工=丸か建設)。エレベーターは設置されていない。築57年が経過しており、2014年度には耐震補強工事を実施済み(施工=小野田建設)。しかし手狭で、相談スペースのプライバシー確保が難しい点や、行政資料の収納スペースが足りないといった指摘もある。また、議会と農業委員会は小野田支所、教育委員会は宮崎支所に入居しているほか、保健福祉課と上下水道課が本庁舎と別の建物に所在する分散配置も課題となっている。

このため機能を集約して建て替えることで、1カ所で行政事務が済む業務効率化と来庁者の利便性向上、相談・待合スペースの確保、バリアフリー化、災害時の拠点機能確保などを図る。

庁舎の建て替えをめぐっては、15年以上前から議論がスタート。地域審議会の意見や建設検討委員会の答申などを踏まえ、10年には庁舎の位置を矢越地区に変更する条例が議員の3分の2以上の賛成を必要とする特別多数議決で成立。基本設計(担当=山下設計)と用地買収および造成まで完了した。しかし町長が交替した11年以降、再び庁舎の位置を現在地周辺の西田地区とする構想が浮上。位置条例の再変更案が12年に2回、議会に提出されたがともに否決されている。

石山町長は懇談会で、町の財政負担が抑えられる合併特例債の活用を前提とした場合、期限から逆算すると既に事業スケジュールはタイトなことと、庁舎の位置を定める条例が通常より重みのある特別多数議決で承認されたことなどを考慮し、現行の条例が定めている矢越地区を建設候補地として具体的な検討を進めたい考えを打ち出した。

矢越地区の候補地は、国道347号と国道457号の交差点の北東角で、セブンイレブン中新田矢越店の対角線上に当たる場所。敷地面積は約1万5000平方㍍。

懇談会で担当者が説明した計画によると、新庁舎の概要はRC造で階数は3階程度、延べ面積は約4800平方㍍を想定する。近年、県内で庁舎を建て替えた他自治体の事例を参考に1平方㍍当たりの単価は約50万円を見込んでいる。それを基に概算事業費は32億円(うち庁舎本体工事に約24億円)と試算した。デザインに関して石山町長は「シンプルで丈夫な施設がよい」との考えも述べた。

28年度完成から逆算したスケジュールは、本年度内にも機能や規模を盛り込んだ計画を取りまとめる。過年度の検討成果を叩き台とし、外部委託はしない方針。立ち上げの時期は未定だが、町民を含むワークショップなどを開いた上で24年度に基本設計を作成する。委託先の選定方法はプロポーザルなどが想定される。その後、25年度に実施設計をまとめる。26年度に工事契約して着工。工期は約18カ月を試算し、27年12月完成、28年5月の開庁を予定する。28年度には既存庁舎の解体も行う。

また、既存庁舎周辺の西田地区町有地の活用については、中新田小学校の建て替え用地や定住促進住宅の建設用地とする案のほか、催事の対応を考慮し当面は空き地(駐車場)として管理するといったプランが示された。小野田・宮崎の両支所に関しても、機能は維持して利便性向上を図る考え。

なお、町政懇談会は6日の西小野田地区を皮切りに、11月中に町内9地区で開く。西小野田地区の会合には30人余りの町民が出席。最近移住してきたという住民は、条例で矢越地区に場所を定めた経緯の説明を求めた。70歳代の住民は、既存施設はエレベーターが無く不便なことや、窓口は隣の席が近くプライバシーへの配慮に欠けること、手狭で職員が仕事をしづらそうといった点を指摘した。

 

#記事カテゴリー