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2024-09-24# 物件(大河原)

角田市/JAXAの官民共創施設と連携/宇宙産業の企業誘致へ/すでに1社が打診、新たな産業用地確保も検討

角田市は、市内に立地する宇宙航空研究開発機構(JAXA)角田宇宙センターで「官民共創推進系開発センター」の建設が進んでいることを受け、宇宙産業の企業誘致に力を入れる。現時点で開発系企業1社から打診を受けている。

9月定例議会で黑須貫市長は「官民共創推進系開発センターの民間活用を核として、市内に立地を目指す企業に対応したい。角田宇宙センターとさらに連携を強め、企業誘致に努めていく」と意気込みを述べた。

宇宙産業の市場規模は近年、世界的に急拡大している。2020年度の全体市場規模は約40兆円だが、30年度に約100兆円を突破する予測もある。海外では民間企業の参入で、宇宙産業への投資が活発化。商業宇宙旅行の実現や、衛星インターネットの成長などが規模拡大の要因となっている。国内でも、経済産業省の宇宙基本計画では、20年度の市場規模4兆円を30年代早期に倍の8兆円に拡大する目標を掲げている。

現在、角田市内および県南部ではロケットエンジンや衛星部品を製造する企業は点在しているものの、設計や開発などを手掛ける企業は立地していない。県内で見ると21年、東北大学発のスタートアップ宇宙ベンチャー・ElevationSpace(仙台市青葉区)が設立された。同社は東北地方の他業種3者と協力し、東北の民間企業初となる人工衛星の打ち上げプロジェクトを25年に実施する計画。

角田宇宙センターは、ロケットの心臓部となるエンジンの研究・開発に取り組んでいるほか、民間事業者のロケット推進系の開発支援も行っており、国内の大手宇宙産業メーカーやベンチャー企業との連携を強めている。民間による打ち上げビジネスがトレンドになり、ロケット事業を展開する企業が増えていることから「官民共創推進系開発センター」の新設を立案。設備の提供により、民間事業者の市場参入に当たって初期段階のリスクを低減でき、独自開発できる能力・技術を身に付けてもらうことが狙い。施設整備は設計技術協力・施工一括のECI方式で選定した阿部和工務店が担当。開所は25年10月を予定している。

施設の特徴は、推力10㌧規模のエンジンや個別パーツの実験が可能。同じ実験ができる設備を2カ所以上配置し効率化を図るほか、燃焼騒音消音装置を設けて近隣への騒音対策を施す。積極的に民間使用を想定する設備の導入は、今回が初めて。

角田市としては今後、宇宙産業関連企業の立地に向け、具体的なPR方法などを模索していく方針。また企業ニーズを汲み取り、必要に応じて新たな産業用地の確保も検討する。なお、市は15年に角田宇宙センターの開設50周年を記念し、JAXAと連携協定を締結済み。人材育成・地域づくり、産業振興、教育支援といった分野の活動で連携している。

 

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