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2023-10-05# その他

農政局北上土地改良/吉田川流域地区の事業計画/本年度から地区調査進む/排水機場19カ所対象に統合など再編を検討

東北農政局北上土地改良調査管理事務所は、宮城県中部を西から東へ流れる吉田川流域で国営事業化に向けて調査を進めている。本年度から国営土地改良事業地区調査に位置付け、各機場の概略設計などにも着手した。地区調査の完了後、全体実施設計に移行する。

吉田川流域は、大和町、大衡村、富谷市、大郷町、大崎市、松島町、東松島市に及び、排水受益面積は約4500㌶。いずれも宮城県が整備した19カ所の機場があるが、近年は局所的に短時間で大量の雨が降るケースが増え、同流域も甚大な被害を繰り返し受けていることから、排水能力の増強に取り組む。

既存の機場は1968年~2001年にかけて建設。対応できる降雨量は、県営ほ場整備事業と県営かんがい排水事業で整備した施設は10年確率、県営湛水防除事業では20年確率の能力となっている。今回の事業化に向けては、より排水能力が大きな施設整備が可能となる国営農地防災事業(豪雨災害対応型)の適用を想定。30年に一度の確率の大雨に備え、3日間で260㍉㍍~290㍉㍍の雨量に対応できる施設を計画。同流域が甚大な被害を受けた令和元年東日本台風では300㍉㍍前後の雨量を観測したが、排水機場の能力増強により、減災を実現できる見込み。

豪雨災害対応型の農地防災事業は本来、1機場当たりの排水受益は300㌶必要だったが、流域治水を推進するに当たり、同プロジェクトに取り組む水系については本年度から100㌶に緩和された。この基準を踏まえ、19カ所の機場を対象として統合など再編整備を予定している。個別の整備手法は、既存機場の統合(新設および廃止)、能力強化(水路対岸に改築)、既設補修および増設といったケースを想定する。

事業計画は調整段階のため流動的だが、現時点の想定によると、下流側から、中下(しも)排水機場は浅井排水機場と統合、若針(ばり)排水機場は未定だが何らかの整備を予定。前蒲(かば)排水機場は藤ノ巻排水機場と統合。弥勒堂排水機場は排水受益が100㌶に満たないため、関連する他事業での増強を想定。山王江排水機場は受益の水路を変更して既存補修。幡谷排水機場と品井沼排水機場は能力強化、不来内排水機場と志田谷地排水機場は既存補修+能力強化を想定している。

黒川郡内では、前川排水機場は大幅に能力を増強するほか、羽生(はにゅう)排水機場は能力強化、後谷地排水機場と中村排水機場は統合。また、三ヶ内(さんがうち)排水機場と檜和田排水機場は能力強化、西川排水機場と大平(だいら)排水機場は既存補修+能力強化を計画中。

排水路については国営か県営での新設または改修を計画。吉田川の断面を確保するための河道整備は、東北地方整備局が工事を展開している。

関連する主なコンサル業務は、21年度発注の「排水施設整備構想検討」はNTCコンサルタンツ、22年度の「事業構想検討」はサンスイコンサルタントが担当。23年度は「統合排水機場ほか概略設計その他」(対象は中下と浅井、前蒲と藤ノ巻、後谷地と中村など統合を想定する機場)と、「排水機場ほか概略設計その他」(対象は品井沼と志田谷地の両排水機場)をともにサンスイコンサルタントが担当。また、水管理システム基本設計は日本工営。このほか、若針と前川の両排水機場の基本設計をプロポーザル手続き中で10月12日に見積もり合わせの予定。

なお対象エリアでは、鶴田川沿岸、鳴瀬、美里東部、大和町の各土地改良区が、所管する水利施設の操作管理を行っている。

 

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